生きるのって苦しいばかりなんだろうか?/由比良 倖
 
・パットンの1934年の録音は、とても薄い透明な膜を一枚挟んでいるみたいに、ほんの少しだけ遠くに聞こえて、彼の演奏や歌がどれ程素晴らしかったか、想像で補いながら聴く必要がある。1920年代のマ・レイニーの録音となると、彼女のブルース歌手としての素晴らしさは分かるけれど、歌声よりもノイズの方が自己主張が強い。
 話がずれた。……言葉も同じで、感情さえも超えたような時間を永久保存出来る。(と、こう書いていて息が詰まるのは、完全に自業自得とは言え、僕個人にとって一番大事で残すべきだった言葉たち、僕が命を削って書いた言葉たちを、全部削除してしまった過去があるから。未だに苦しいほど後悔する。)全てが音楽と
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