大阪文学学校の思ひ出 ─続・大阪文学学校体験記─/室町 礼
の座敷でたまたまわたしは日高てるの
隣に座ることになった。70近いとはいえ日高テルの
ふくよかな太ももがわたしの膝にふれんばかりの距離
にあった。わたしは何を思ったか日高てるの太ももに
そっと掌をそえた。まったく自動的に、そうしなけれ
ばいけないみたいに何も考えずにそうしてしまったの
だ。するとさすがに日高てるだった。そっとわたしの
手を握り返してきたのである。わたしは四十半ばだっ
た。光源氏みたいに70近い老女を相手にするのがホ
ンモノのプレイボーイ(古いが)なのだろうが、ふと
詩壇の重鎮、長谷川龍生校長の顔が浮かんだ。二人は
いい仲なのである。いつもいっしょに連れ添い、酒席
でも肩を寄せ合っている。
わたしはそっと手を引いた。日高てるもまったく微塵
も表情を変えずに笑って飲んでいる。いや、危ないと
ころだった。
大阪文学学校を激震させるおいらくの三角関係を未然
に防ぐことができて、今、わたしはほっとしている。
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