"愛おしい"/瑠音
思っていたよりも浸透していた恋を
歌う彼女がまぶしく見えて
離れてしまう前に
抱きしめようと思った
引き寄せるというしぐさはもうそれだけで
さようならを連想させるとしても
とめる必要なんてないのだと知ってた
本当にさようならだったから
愛おしいという科白は
言うよりも想うほうが正しくて
口に出すなら愛しているよと
その言葉が
その一瞬君だけのためのものになる
"愛しているよ"
だから君からもどうか
その言葉を頂戴
先に泣いたのがどちらだったのか判断がつかなかった
おそらく僕で
君だった
"愛おしい"
一人になっても声にせず
口の中で繰り返すその言葉は
君のためだけに言うけれど
決して君には
届けない
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