屋上/rabbitfighter
まだ屋上が開放されていた頃
手すりに背をもたせて煙草を吸っていた
思い出せる季節はいつも夏で
我々の影は強く輪郭を投げかけていた
ところどころペンキの剥げた
檻のような手すり
実際には聞いたことのない
空襲警報
が
聞こえた気がして
水の張った
赤いバケツに
まだ火の付いている煙草を爪弾いて
その軌跡を
回転しながら弧を描く
煙草を
圧力が原動力となり人々は屋上を目指さざるを得ない
あふれて
こぼれていく
手すりを乗り越えて
まだ、屋上が開放されていた頃。
戻る 編 削 Point(1)