すべてはなくなるものだから/紫野
3月だったか4月だったかに死んだ親戚の家を片づけに行った。
特に付き合いのなかった人で幾度か喧嘩腰の電話を受けたぐらいしか記憶がない。そんなもので片付けは事務的に淡々と進む。所帯道具一式、服、台所に残る食料品などを市指定のゴミ袋に詰め込んでゆく。もう誰も湯を沸かさないアルミ鍋、着ないスカート、食べない素麺、しまい込んだ高価そうな草履、お守りらしい陶器の何か。。その人に思い入れがあればひとつひとつの物品を確かめながら処分してゆくのだろうが、そうでなければ本当にただのゴミだ。ブランキー・ジェットシティの歌詞で、オレが死んだらあのブーツはどうなるんだろうとかそんなのがあったような気がする。物は残るがそれもやがては錆び、劣化し、崩壊するだけだ。実際、戸棚の奥にあったものなどは既に虫に喰われていた。死はその人を知る一部の人にしか重いモノではないなと思った。まあ常々思っているが、私が死んだら色々勝手に捨ててくれてとっとと忘れていただきたいものだ(笑)
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