ぼくはあたらしいか/狸亭
ほうが多いのだ。
おもくかさなる夏に、
つもりゆく書物のように憂鬱で、
いつまでもきえてゆかない記憶のように
くるおしい。
観覧車の上から
地上にうごめく点のような人間をみつめて、
あの点を一つ一つけしてゆけば
そのたびに、
この手に憶万の富を得られるとしたら
君ならどうする。と
問いを発した第三の男ハリーの
しろいつめたい顔のように
世界が存在するとしても、
ぼくは生きていかねばならない。
春も秋もない、
熱い砂漠のただなかに放り出された兵士たちよ
きみらは祖国を信じるか。
正義の戦争よりも、
不公平な平和がどんなに貴重であるかを
なんどくりかえしたらわかるのだろう。
ぼくはいやだ。
銅がある朝目覚めてみるとラッパになっていたからといって、
それは銅の責任ではない。
くりかえされる朝に、
ぼくは日々あたらしいか。
感覚を開放せよ、
日々変貌する世界に向かって
ぼくはあたらしいか。
言葉いじりはいらない。
ただただ、ぼくはあたらしいか。
ぼくはあたらしいか。
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