女の脚/リリー
 
 
 にぎわう大通りのバス停
 心無しか暮方の鼓動
 増したような

 とり巻く人影に
 女の脚がふとためらう
 (昨夜、踵にオリーブ油をぬらなかったけど……。)

 コンサートホール前の道端、
 ふと黙りこむ女の脚
 その上ふうわり 秋のそよぎに燻る
 雲の色

 花の様に
 にこやかな恋を
 風の様に 忘れ果てた女の
 欠けゆく月の光
 歌の出なくなった此の頃

 昨晩、貴方の日頃を占ったら
 悲しみと出た
 私の日頃を占ったら
 喜びと出た
 ちょっぴり唇に浮かんだ密かな笑み

 そんな 女の脚がヒールの踵を気遣いながら
 しなやかに往く
 
 
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