仮名桜待ち惚け/万願寺
思考を破綻させることがない。長い長い春の日なのだと言う。そのような日に、生命の自死を多く抱えた人間たち(今は義体の素材としてその名が残るだけだが)、弱種族たち、そして恒星、系にまつわる惑星、は、仮名桜のはなびらが水面に落ちる様子を、逆再生された悲しみとして味わうことがあった。誕生の逆車線。かれらの存在が、いやおうなしに、そうした「気持ち」を爆発させるものらしい。仮名桜に出会ったら、今はいつですか、と聞くのが由緒正しい形而下お伺いであり、仮名桜はこう言う。「待ちくたびれました」。
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