雨の街と夜/
木立 悟
けらが過ぎてゆく
かつて流れたものの記憶が
崖の斜面に刻まれている
枯れ木が枯れ木のまま伸びはじめ
未明の星を掴もうとする
枯れ木の下に重なり倒れる
人のかたちをした時計たち
ふたつの夢の
片方を忘れ
思い出そうと
すべてを忘れ
午後の光はうなじの氷
短い息と夢のあつまり
壁から壁へと馳せる虹が
雨が来る雨が来ると歌い撒く
なまあたたかい夜の波
鉄の花さえ冷やせずに
電球のなかの鈴と蝶
打ち寄せる音に浸されてゆく
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