おれが愛に気づいたとき、その愛がおれに語ったこと/中田満帆
 
勝手に進めるんじゃねえくそったれ、おまえ死んでろ
 なにいってんだ、おまえもおれだろ、おれのはずだろ?
 おまえのくそみたいな音楽趣味にずっとつきあってきたし、
 映画も観たし、デートにもいったろ、いまさら「いやです」なんでいうなよ!
 それでいままのところ、痔の痛みは治まってますよ、先生。
 次の予約はいつでしたっけ?──え、もういいって?
 「もういいです」ってなんだよ、おまえ!
 だ・か・ら、ダダイズムの時代は終わったんですよ、
 いまから子供たちの迎いがあるので着いて来ないでくださいね。
 どこか見憶えのあるような、
 空気のなか硝酸系の毒物を蒔く
 粒子を超えたなにかから現れたきみの、
 愉しそうな子供たち、
 大丈夫もう終わりだから
 地下鉄工事の終わらない夏休み 
 眠れない夜をいくつもいくつも数えた、
 だけれど、それ、ぜんぶ終わるから、
 だからおれを此所からだしておくれよ、もう、ぜんぶわるかったから、
 ただきみとふつうに話がしてみたかっただけなんだ、おれって。

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