夏待ち/細川ゆかり
 
まばたきをした
一瞬だった
焼きついて離れない
5月のこと

消しゴムを切った
窓辺の机
ボロボロとこぼれた
ことばではなかった

放し飼いの感情は
つかまえて
施錠する夕暮れ
気付いてた

あたたかい君の手が
振り払えない
涙ばかりあふれてくるよ
本当は
まっすぐ見つめていたいのに
あたたかい君の手が
遠のいていくよ
きっと
不覚にも憧れてしまった
僕の

夏は
ことしも
めぐってくるのに


あたたかい君の手は もう
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