CLOSE TO THE EDGE。/田中宏輔
●まことに●人生は一行のボードレールである●快楽から引き出せるものは快楽だけだ●苦痛からは●あらゆるものが引き出せる●笑えよ●この世から●わたしがいなくなることを考えるのは●それほど困難なことでも怖ろしいことでもないのだけれど●なぜ●わたしの愛するものが●この世からなくなることを考えると●怖ろしいのか●しゃべる新聞がある●手から放そうとすると●「まだまだあるのよ●記事が」●という●キキ●金魚●悲しみをたたえた瞳を持って牛たちが歩みくる●それは本来●ぼくの悲しみだった●できたら●ぼくは新しい悲しい気持ちになりたかった●夕暮れがなにをもたらすか●仮面をつける●悲しみをたたえた瞳を持って牛たちが歩みくる
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