タイムマシーンにお願い(光速の彗星より)/本田憲嵩
 
(束の間のみじかい停車時間
(眠りというひとり無人の駅で
(いつも見るのは 過去の人たちのまぼろし まぼろし


社会から
宇宙(そら)へと飛び立つ
乗り継ぎの銀河鉄道へとこのまま一気に走り抜けるのか
加齢という加速
日々の労働という一直線なレールの上での光速
いつも見据えるたびに遠い世界の車窓に映り込んでいるのは
もちろん年老いた僕の貌
その老いた僕の貌がもうとっくに今の僕の貌になっている
という
それは 若いまま一気に歳月を経てしまった浦島太郎の理論ではないから 相対性理論でもない
ただ歳月に伴ってしっかりと一気に老け込んでしまった
浦島太郎の後悔 のみが
そこにあるだけだ


そうやって僕は毎朝
スピード狂の親方様の車に乗って掘削の現場へと向かう
その速度はさながら光速の宇宙船に乗っているかのように
その身体はさながら満員電車に乗っているかのように 揺れている 揺れている


まるで出来損ないのタイムマシーン みたいに


戻る   Point(4)