空/由比良 倖
 

それは、ここで見る空と同じだろう。
僕は外国語で詩を書きたい。


――時々、ここがもう現実ではないような気がする。
外にいれば植木の下を覗き込んで、蟻がいないか探す。
蟻がいると、たったひとり、空から睨まれているような不安を覚える。
緑の濃すぎる植木。明かりを付けるのが怖い。


――音楽だけが帰り路。
懐かしい、遠い国への。ひんやりした風のそよぐ道。
カラフルな影のある、曲がりくねった道。
ヒース畑が、空みたいに拡がる、悲しい土地。


透明に砕ける波打ち際で「僕はここにいる」と呟いた。
空気はガラス張りのようだった。消滅を感じた。
悲しみも、血
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