湿潤/ただのみきや
り得るか
また状況と個人差どちらが優勢か
そんな実験は行われない
きっかけは「互いに孤独だったから」
そんな言葉遊び
瞑る
声も朱に染まり
水面に燃えている
――ほら
黒い翼が降りて――
惜しみこそすれ
飽くことはなく
卑猥
盲人の上まぶたで旅行鞄が転がった
蔓草に覆われた光の空港で
褪せてゆく
かつて鮮血だった声が
頭の中と外を繋ぐ鳩
砂糖の翼は潮解する
白米のように顔もなく
溺れる群衆から生え出でて
ほほ笑む静物と化した
めくる指を待つだけのあなたは
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)