夜空にある何かに/宏子
んども開いたり閉じたり
閉じたり、開いたり、閉じたり
そうするうちに許されるものでもあるかのように
指をなんども開いたり
閉じたり
指をなんども
開いたり、閉じたり
寒空に
鼻水を垂らしては
互いに鼻をかみ合って
汚れた指を土でぬぐった
ふざけた指はまた土で汚れた
だから指のことが好きだ
指のことが好き
嘘ばかりのなかにまぎらせたほんとうだから
わたしたちの分布で
まぶしいほどの段丘
星座の残骸は垂直に降り上がって光のトンネルを作る
真昼のように輝く夜を大地は駆け巡っていく
わたしのウィンドブレーカーの裾を膨らませ襟首を抜けていく何か
命よりゆっくり時を刻む何か
光の中の闇 そんな闇の中の光
水路の水の音きこえる
甘い、破裂する土の香り
いちじくの葉
なんでもない
何か言いたかったんだよ、嬉しくなるようなこと
生きているうちにできることなんてこれっぽっちしかない
夜空にある何かに
聞きそびれたことすべて訊ねて
すべては無理でも、ほんの少しでも訊ねて
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