完全な闇が取り払われるとき/ホロウ・シカエルボク
 

その日わたしはどうしても部屋のライトをつける気にならず、小さなテーブルの上の灰皿に?燭を置いて火をともしていた、そうして、ソファーにもたれて南米のリズムのようにゆったりと揺れる火を眺めていた、脚を組んで、背もたれに片方の肘を立てて…そんなふうにしているとそのうちに、子供の頃にそんな座り方をして母親によく叱られていたことを突然思い出した、人間は自分自身を忘れないものだ、たとえ表向きはすっかり違う人間になってしまっていたとしても…それからは記憶喪失患者のリハビリのように、長いこと思い出しもしなかったことを断片的に思い出しては、ちょっと眉をしかめたり舌を鳴らしたりしていた、昔話を楽しく語ることが出来
[次のページ]
戻る   Point(1)