元号の星より/本田憲嵩
風が吹いてきて、けれどもふたりはそのさきにある白い雲のなかへとたちまちに消えていってしまった。その雲のすぐそばを令和の最新型のヒコーキが線を引くように通りすぎてゆく。ぼくのまわりには懐かしい昭和の赤トンボが古いヒコーキのように飛びまわっている。令和と昭和、いったいどちらの元号の星にぼくは今いるのだろう。飛行機はトンボの形態をルーツとして発明され飛行しているのか。はたまたトンボは飛行機の形を予見してその形態をとっていたのか。ぼくはいま判らないでいる。
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