快楽からの追放者/ただのみきや
 

溺れそうな空
まつわる光はまつ毛に重く
秋桜に迎えられ
坂の上まで送られて

いつも喪服を着た
踏む者もいない影が
ことばを忘れたものたちの
風とまぐわう声を聞く





のぞき見と告げ口の世界

紙ふうせんで遊ぶこどもは
うつろな両手に月をつかんだ
誰かがのぞいていた
誰かが告げ口した

紙ふうせんはその子のこころ
からっぽなほど舞いあがる
誰があんなに放ったか
ぺしゃんこにしたのは誰か





切手

枯葉色の装いで
その蝶はフロントガラスに降りて来た
しばし光と戯れて
風に抱かれて去って行っ
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