廃線跡/妻咲邦香
ていた
走っていないのにどうしてだろう?
しばらく考えていた
あれ以来、町を歩いていると、ついつい足元に線路を探してしまう
ある筈のない路線
駄菓子屋はコンビニに、桑畑は駐車場になった
迷い込んだ小さな蒸気機関車が
立ち止まる
誰を乗せようか
何処を目指そうか
考えているうちに、何者かが私の顔を見上げている
子供だろうか
すぐ傍ら、驚いた表情で覗き込む
暫くは動けないといった様子で
私の蒸気機関車
私にだけ見えた姿で
今は何処を走っているのだろう
真っ直ぐに前を見る
途端に線路が見えて来た
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