猫/妻咲邦香
ように
嘲笑うように
電車の音がする
季節が徐々に引き裂かれていって
中の肉が顕わになって
血生臭い匂いがする
その匂いを嗅ぎながら
君は僕を見ている
見て座っている
石畳の上
全部投げ出して
持っていたもの全部
鞄や化粧道具や飲みかけのペットボトル
投げ出して、転がって
急な階段
滑るように、落ちていく
君の周り
君以外全部
転がり落ちていく
街も景色も何もかも
それを君は見ている
僕も見ている
夜も見ている
夜は濡れて光って、いる
居酒屋の引き戸が開いて
ビールケースの空の瓶、が
触れ合う、音が、する
僕の、カメラ
は
壊れ、て
いる
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