神隠し/ただのみきや
てなして稀人に連れ去られ
いつも失い
いつも残された
この目が耳が知るもの
指先や皮膚が触れたものを
現実と呼んで疑わないことは
見たことも触れたこともない
神を疑わないことによく似ている
日常という意識の破線
道路の白線を綱渡りする子どものように
踏みはずせば落ちる
ゴッコのルールで
悲劇を楽しむ祭り
その装置は維持されて
自分で漕いでか慣性に漕がされてか
どこにも行けずに空回る
ネズミの夢は駆けてゆく
日常は迷信であり
村八分を見出す装置であり
生贄にされて神隠しに遭って
やがて稀人として再来するか
それとも八分として追い出すか
塩を撒け 戸板も閉め
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