水と焦土/木立 悟
 
ってゆく
壊れた棲み処を直す蜘蛛
茎の上の午後を聴く


たくさんの目に見つめられ
羽は崖の径を曲がる
誰も誰も追っては来ない
何も何も行方には無い


明るく荒んだ小さな風
岩のにおいと種を運ぶ
坂の途中にはひとつの音
常に冬をまとう音


雨が来て
水たまりが来る
映るものは去り
また ひとりになる


岩と川を染める音
ぽつりぽつりとうたこぼす手のひら
ひとりだけが揺れている
ひとりだけが受けとれない


山々のはざまにくすぶる影
途切れた径を越える曇
生えはじめた草を踏み
水辺を描く素足を見る

















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