遊泳禁止/ただのみきや
 
あやめをいけた六月の
ぼんやり雨に化けて出る
母さま草葉の陰だもの
果物そなえて花そえて


真顔で誤魔化す気取り屋のヤドカリは
酢漬けのキャベツでネズミを誘う

黒蜜がからみついた朝の鬼門から
蟹みそ暮らしに見る母の口伝まで

転げまわるなまくらな木霊の裾に
アゲハ蝶のもつれた流浪その愛が羅列された

後ろ手で見積もる八百屋のキャサリンは
毛の生えたナマコのひもじさを紐で縛る

蹴られる小声の解体新書を腹に括って
議事堂占拠 幕の内から鬼は外 

部族ひとつが滅びた朝に苦い金平糖が降った
黄色い螺旋どこまでも影もなく






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