蠅の王が見ている/ホロウ・シカエルボク
 
いる、左腕だけが奇妙に冷えている原因がわからない、無作為の欠陥、そいつはいつだってそこにある、部屋の温度がゆっくりと上がり始める、エアコンのスイッチを入れる、いつからかずっと、混濁する季節の中で暮らしている、じっとしているのに飽きたら服を着替えて、空襲のあとみたいに焼けている外界を歩く、文明は騒音をそれとなく認知させる、空気を汚すものを利器だと呼ぶ、通りすがりに必ず、顔を盗み見ていくやつら、野良猫よりも無軌道な若者たちの自転車、自己肯定が大前提の連中は、歳を取っても子供のままでいる、もちろん、それは美しい意味合いなんかじゃない、変化を求めない純粋さはただの我儘だ、ゆっくりと、トレイが傾くみたいに世
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