ひとりで歩いた道のことしか覚えられない/ホロウ・シカエルボク
どこからやってくるのか分からない鈍い反射を受け止める網膜は在りもしないものばかりを確信したがっていて、薄汚い言葉ばかりを口にしてはまた時間をドブに捨てる、昨日までの雨のにおい、溶解した記憶が隠れるように流れていく排水溝、ダル・セーニョばかりの譜面、瞳孔の奥、人生で一度も気づいたこともないものたちのわだかまり、クラクションの乱れ打ち週末のハイウェイ、狂気に裏打ちされるべき正気、顔面殴打のダメージの反動、ロード・ムービー垂れ流し二十四時間、コンドミニアムでピック・アップされた連続殺人者の閉ざされた唇、五臓六腑駆け巡る世迷い言、連続する動乱のまたたく間に増えていく亡骸の数、百聞は一見にしかず、目に見
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