鼓笛隊は反旗をひるがえす/ただのみきや
 
す者 
現わす者 
名指す者よ

ゆらめいている
木蔭と木漏れ日
厚みのない世界でのみ手を取り合える
わたしたちは共に
記号の中に現われる


ひとつの豊穣が燃え上る
前髪を切りそろえた
姑息なあどけなさ
熟れたプラムを指で潰す
トカゲの尻尾の絶叫
注射器の中で眠っている
空に盗まれたふたつの石


瞼の裏のうすむらさき
がらんどうのラジオ
酒に浸した脳からインクが染み出している
言葉に滋養はない
ただ味だけがある
沼の主を呼び寄せる
音だけがある


瞳の夜が焼かれて
皮を剥がれた世界

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