平和主義者の丑の刻参り/ただのみきや
 
ヴィーナスの骨格標本

ぼんやりした横顔に秘密がひとつ擬態する

ぼくは夢に絡まったままコーヒー自殺を図った

飛行機に乗る人とよく目が合う朝

青く濁った空の吐瀉物からなにを紡ぎ出そう

君がパッと弾けた日ぼくは無骨な骨壺だ

無防備に透けた一日の厚みに耳を当てる





天気予報が外れた日

山々が消されてゆく
雨は泥土を流し切れず
涙は悲しみの上澄みに過ぎない
利き腕のない男
頬に燭台とその陰影を宿す

標本にされた占い師の臓器の中で
一羽の蝶が現を夢見ていた
神々の白くわだかまった思考の中で
その翅の青い錯乱を宿した視
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