亡者の先導、沸点のブラッド/ホロウ・シカエルボク
 

死霊のように空を彷徨う俺そのものの幻を、置き去られたように見上げている一二時間、彼方に佇んでいる雨雲は、ある日突然自死を選びそうな誰かの微笑みによく似ていた、朝食の後味は奇妙に歪んでいて、つまり、それは食ったものとはまるで違うものみたいで、困惑した俺は何度も口腔を舐め回した、一番長く舌を伸ばしたとき、目の裏でなにかが小さな音を立てたんだ、でもそれがなんなのか結局分からなかった、だからいつかありありと思い出すに違いないと思って、なにに記すこともなく時計の針はグルグルと回った、時にはなにかが、絶対にそうではないもののように存在する瞬間がある、それを人は霊と呼ぶのかもしれない、空間の歪み、意識の歪み
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