小詩集・中庭/岡部淳太郎
それが濃密で 時に薄い
空気を中庭全体に行き渡らせている
それを吸っては吐いて
この場所にせきとめて
いるのは 私
ここにいるだけで
ここの空気は澱んで
滞留して汚れてゆくのに
私はその事実に気づかないでいる
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中庭 6
この中庭を
出て行く者は誰か
いつの間にか ここに
影のように入ってきて
居ついてしまったのが私ならば
いつの日か ここを
去るべきなのも
私のほかにはいない
私が去って行って
この中庭に残るのは
人が去って行って
この地球に残るのは
ただ 午後の
柔らかな日射しのみ
(二〇二一年四月)
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