出口のないトンネルには入口がない/ゼッケン
た方がいいのか、
それとも離した方がいいのか、ぼくは立っている椅子の上でつま先立ちでふらふらしながら、
輪になったロープが自身の首を絞めないように手のひらをロープと首の間に挟んでいる
ロープは高い場所まで伸びて、不可視の滑車にかかってまた下まで降りてきているようだった
その端をおれは握っている
見上げれば、ロープはずっと澄んだ青い空の雲の上に
おれたちはどこにも立っちゃいないんだ
地面はない、重力は
地面がなくたっておれたちにかかるんだぜ、地面が重力を発しているわけじゃない
墜落して死ぬのは地面にぶつかるせいだ、重力がおれたちを殺すわけじゃない
ぼくは椅子から飛んだ、地面がないのでどこまでも落ち続ける
おれはぼくが落ちた分だけ握ったロープに引かれて宙を上昇する
おかしな話だと思う。なぜ、おれの方がぼくより軽いんだ?
意志ですよ、おれの横にいて一緒に上昇するわたしが言う
ぼくには落ちる意志がある、だから、わたしたちより重い
ご立派なホルモンバランス
勝手にしろ
加速は続く
光の速度まで
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