vagabond/ホロウ・シカエルボク
誰かの手から零れて、真夜中の街路で砕けたウィスキーのボトルから流れ出る僅かな酒は、病巣に塗れた誰かの喀血を思わせる、ささやかな色合いはいつだってほんの少し、呪いみたいな印象を残す、お前みたいにせせこましい真似なんか出来ないさ、俺は生命の、可能な限りの深淵まで潜るのに忙しい、蚊の鳴くような声で鳴くのがそんなに誇らしいのなら、死ぬまで続けていればいいさ、瓶の欠片を拾い上げて、ブロック塀に引いた細いライン、今日の些事がそこに飲み込まれていく、へまをして指先に微かな傷がついた、血が渇くまで舐めてそれきり忘れた、ドボルザークの管弦楽曲のような夜空、夜明けが狂気で満たされるだろうことはもう判っていた、どこ
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