振り上げた拳で自らを力いっぱい殴る人のために/ただのみきや
えて
ただ黙する時にだけ詩人は真実に近い
芽吹きを夢見る静けさだけ
記号化されない囁きの巡りだけが
*
唾液が細く光っていた
針千本飲まされて
紙飛行機は不時着する
きみの真っ赤な衝動が熱を帯びて
孔雀たちの嘘が絡まり始める
アトラス像は崩壊寸前だ
誰もが自由を求めているようで
普段忘れていられるほどの
長さの鎖をむしろ求めている
アメーバの曖昧な歩みも
言葉にした途端
カブト虫なみに硬くなる
灰になって自由を得た
手紙は再び夢へと帰る
針で留められた標本を残して
*
その歌声は風だろうか
それとも風の囁きに微笑んだま
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