ノクターン/ただのみきや
 
つも身投げした
棄てられたカードのように
脱いでも脱いでも裸になれない
青いガスの花を見続ける
少女に言葉は通じない
空に捕縛された地の古の貪婪に
毛皮をそっと撫でるよう
男のことばは去勢された夢
煙の手癖むすんでほどけて





走り書き

その時間は蝶のように
わたしの微睡みに止まっていた
手をのばすとそれは逃げ
二度とは戻らなかった





ノクターン

傷口は夜だった
川で洗うように冷たかった

星たちの片言
瞳で火の粉は異なる音で鳴った

あなたは溶けた
すべて言葉ではなく涙となって

わたしは堪能した
螢を包んだクシャクシャの手紙



            《2022年2月19日》








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