あの時の詩に寄せて/短角牛
 
私にとって詩は、研ぎ澄ませるものではなかった
周りで誰も描いていなかったから、やるだけで飛び抜けた

書くこと自体は好きで、たくさん書いた
随筆のように、物語のように
毎日書いた

ある時、恋をした
気持ちを詩に変えて、伝えた
その人のことでなく、自分を書いていた

ある時、タイワンフウの紅葉に心打たれた
感激を詩に変えて、記録した
鮮やかな橙色ではなく、映えた秋空を書いていた

私の視線は偏っていて、散逸している
きっと多くの心を打たない、凡庸な心象

私の詩は、研ぎ澄まされていない
だけど

時々、未来の自分の心に触れる
逃げ場のない凡夫の傷を慈しむ

私はよく、あの日の自分と佇む
よく、一緒に泣いている

あの時は感じなかったけど
孤独だったのだけれど

きっと未来の自分に、撫でられていたのだろうな。

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