詩の日めくり 二〇一九年三月一日─三十一日/田中宏輔
 
は、とてもさびしそうな顔をしていたようだ。
たくさんのひとが、たくさんの傘をさしている。  
同時にただ一本の傘をさしている。 
それぞれの手に一本ずつ。 
ただ一本の傘である。 
たくさんの傘がただ一本の傘になっている。 
ただ一本の傘がたくさんの傘になっている。 
たくさんの人が、たくさんの傘をさしている。
同時にただ一本の傘をさしている。
二〇一九年三月十五日 「詩人」
詩人のうち、いくらかは
意味を吟味することで人間を知ろうとする 
詩人のうち、いくらかは
人間を吟味することで意味を知ろうとする 
詩人のうち、いくらかは
意味を吟味すること
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