冬の嵐/ただのみきや
 
暴走

釣りの仕掛けで編み込んだ干し草の下から
濡れた小さな宇宙が瞬いて
一点の鋭い感覚の見返す素振りを隠匿する
穏やかな果実の陰影
光の脂粉ただよう傷口からは
食虫花の祈り
引き寄せる秘密の
よろめく眼差しの夜に
はたはたと肌に刺青より近く
鳥たち魚たち





ゲーム

二人の間には見えない一つのチェス盤がある
長い間そう思っていた
本当は違ってチェス盤は二つ
わたしは仮想のあなたと
あなたは仮想のわたしと
責めたり守ったり
差し出したり奪ったり
そうやって気持ちは整理され
昼と夜の市松模様
追って追われて千日手
一息で終
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