四月の空/
末下りょう
今日の残響が
きみのもとにあるために
車窓からの風に幾つもの指紋を残してすれ違った手のひらを
鳥のように空に放した
(春をなくした夏のなかでようやく
ぼくたちはぼくたちの家に帰ることを伝えるために)
灰のなかのわずかな明るさのような 白いマスクを
顎まで下げて 笑った
きみの
湿った呼び声に
呼び名の隙間を縫うように
触れたくて
走り去る電車の影に消えたきみに会いにいく
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