火傷と神隠し/ただのみきや
床暖房に腹ばいで熱燗を飲んでいる
外は激しい吹雪
絵の具の花の赤い一行が見えた
わたしの一番小さいマトリョシカは神隠しにあったまま
帰らない
夜の袋にしまわれたまま
アカシアの棘に傷つきながら冷たい月を嗅いでいる
円形劇場
名付けられた形象たちの内壁を舌と唇で値積もりする
氷柱の美しい倒壊があった
そして煙は語る 小さなひとつの石につま先立って
わがままに素直に踊ることで
君は君というリングを断ち切れるか
一本の限りある線として生き
死の導火線を発火させ続ける
詩を書くことで己を食い尽くす
君は君という幻を断罪し続けて
糖蜜の洗面器で溺れ
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