詩の日めくり 二〇一八年十二月一日─三十一日/田中宏輔
 

彼の横で眠ったふりをしていた。
彼もまた背中を向けて眠ったふりをしていた。
ああ、しかし、その出来事も
その喜びや悲しみも
ぼくのこころがつくりだしたものではなかったのか。
ぼくのこころがつくりだしたものなら
ぼくのこころがなかったことにすることもできるはずだ。
はずなのに。
起きたであろうことも
起きなかったことも
起きたことを知ることができた。
起きたことを否定することができるものは何一つない。
喜びと悲しみ。
それは、ぼくにとって、けっして、ほんとうには
感じ取ることができないものだった。
さまざまな才能があるのだ。
喜びも
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