雪原を駆ける海馬/ただのみきや
 
冬の太陽が弾丸みたいにサイドミラーではじけた
盲人の手を引いて地吹雪を渡る声

活字から落ちて 雪と見紛う
針葉樹を穿つ弱々しい木洩れ日たち


瞬間から瞬間へ
印象から印象へ
生の破線は裂かれてゆく
夢は補完する
現に含みを持たせながら
時間は自己を映す鏡
鏡像こそが記憶である
始まりも終わりも在ってなく
出来事と自分の足跡を辿りながら
帰結のための歪んだ円環と
重心の影を追う傾倒の果て
ぼんやりと球形を成す
記憶は
閉ざされた内的対流
夢想する無精卵
過ぎ去った身じろぎを覆う繭
そこから一本の
絹のほつれを引っ張るように


寒さが耳から拭
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