遊迷樹/木立 悟
山道を夜に染めてゆく
星が吸い込まれる明るい朝に
羽を置いては去ってゆく子ら
その声を忘れてしまった
確かに聴いたはずなのに
空に溶け残る輪
野の火のなかへ去ってゆく影
薄く金色のふちどりが
雨を照らす 窓を照らす
掛けても掛けても外れる釦に
雨が雨が降りそそぎ
波の羽を浴びながら
海辺を迷い 迷いつづける
光の鱗を歩むうち
迷いが迷いでなくなってゆき
深い深い扉まで
雨が雨に降りつづく
夕べの光に焼け落ちる森を
一羽の影が見つめている
地をゆくものも這うものも去り
飛べぬ蛇が飛ぶその日まで
戻る 編 削 Point(6)