素体回帰/ただのみきや
 
夜の死顔は隠匿される
太陽による窒息死
視覚の分厚い曖昧に覆われて
悪夢の下着を脱いだ獣の顎骨から
乱立するギヤマンの伽藍
涸れた河床を磨かれた顔たちが遡上を始める頃
剥離した脱落者は紐で括られて献花台の網目を飾る
神話より古い子宮の展開図
横断歩道ロール・シャッハ
意識のガス化
捲る指先を笑いが過呼吸で満たす
ぬかるむ足跡針と糸 
遠くから海は臓器を震わせて
向日葵の燃える迷宮でおさげ髪の仔犬を追いかける
フランス的体臭
とある時間を閉じ込めたガラスビンの蓋を回す
暦から零れ落ちる円周率の螺旋に浮かんだ小舟には
呪術的手淫から逃げだした蝶々夫人の舌をさぐる指

[次のページ]
戻る   Point(3)