通報者/本田憲嵩
 
ちいさな、迷いの、
みえない、
硬い、戸惑いのプラスチックを、
決断の、とがらせた指さきで、
突きやぶって、
それから、送信の、まるで火災報知機のボタンを、
ほんとうに、
押してしまった、かのような、
消防車の、あなたが、じっさいに現場まで、
駆けつけて、来るまでの、
とても永くて、
みじかい時間、


(ぼくは、
 ベンチに座りこんで、
 まるで、かんがえる人、のような、
 まだまだ、
 純粋な、通報者でした、)


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