演者たち――眼差しの接吻/ただのみきや
た女であり
女が見ているものはいつもいつまでも謎のままだ
そして女もまた知らない
自分がこのように書かれていることを
いつもそう たぶん いつまでも
紫陽花
うつろな眼差しの接吻に
かわいた紫を絞り出す
あじさいは
日に日に深く秋をわずらい
暗く 濃く 光に沈む
踏みしだかれた
霜の匂い
孤独の標本
光を背にして黒々と樹は冷たい虚空に触れ
その影もまた濡れた芝草のうねりを這った
空にはなにもなく風すら死を模倣した
大地は確かにあった
だがいくら触れても影はなにも感じなかった
文字にすることで瞬間は永続する
水晶より硬い静寂
《2021年11月20日》
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