いのちの湿度/ただのみきや
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた
蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか
四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
なだらかな乳房
太陽の燃え滓がくすぶっていた
――帰るって?
幼い自分の手を引いて一体どこへ
この秋の涙腺に口をつけて吸う者よ
雨は黙し
松葉は湛え切れず
つめたい雫
日差しはそぞろ目を反らし
あの気化した銀の輝きはなく
絹のように光を吸って瞑る
つめたい雫 ぬくもりよ
睫毛は鏡の向こうに仕舞い切れず
あからさまに
たんたんと
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