知らずにもとめて/ただのみきや
習作たちによる野辺送り
鏡の森から匂うもの
一生を天秤にのせて
つり合うだけの一瞬
混じり合い響き合う
ただ一行の葬列のため
*
軒の影は広く敷かれ
植込みの小菊はしじまに爆ぜる
立ち寄ったホウジャクは口吻も見せず
かすかに傾く
夏へ逃げ出した蝶の影
*
幼子のやっと結んだ手が
ゆび指す先 こすずめに
桜の落葉あまりに紅く
凪ぎにゆうらり戯れて
*
雨音に糸を通し
つれづれに綴れ織る
ぬれて燃え立つ秋の緋に
ふれる指先 ふるえる光
*
おとなしくいとけなく
夢をふくんで眠る子へ
去り往く虫の音にも似
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