だから、まるで魚が水面を跳ねるように/ホロウ・シカエルボク
 

少し離れたところで双眼鏡を覗いていた、絞りやなんかの設定は出鱈目で、そもそも自分がそこを覗くことでなにを見つけようとしているのか、なにを凝視しようとしているのか分からなかった、それはしいて言えば暇潰しみたいなものだったのだ、そのとき自分の立っている地点にどんな興味も持てなかった、もっともらしい理由をこじつけるとすればそんな言葉になるのかもしれない、ただひとつだけはっきりと言えることは、それは欲望とか衝動とか、そんな類の言葉で語られるようなものではなかったということくらいだ、爪を切り飛ばすみたいにしてそんな初手をついたのだ、いま思えばあの瞬間こそがすべてだった、導かれる、という風に言えばいいのか
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