それは日向の路上でふと頬をかすめる雨粒に似て/ホロウ・シカエルボク
匂いがした、でもそれは気のせいかもしれない、ビルの根元に染み付いた誰かの小便の匂いかもしれない、どちらにせよやはり俺の知ったことではなかった、雨に濡れることよりも不幸なことはこの世にはごまんとあるのだから…約束の時間はもう過ぎていたけれど気にしてはいなかった、向こうにその気があるかどうかも定かではないのだ、少なくともそこまで歩く間は退屈な思いをしなくて済む、だから歩いているだけのことだ、追われているのか脅されているのかタクシーが物凄いスピードで走り去っていった、誰も道路を横断しようとしていなければいいけどな、と俺は余計な心配をした、ジャックダニエルの角瓶が道に転がっていた、時代錯誤な髭の野郎は何故
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