お彼岸/宣井龍人
 
興奮と鎮静が
足元で引きずり込もうとしていたとき
荒い息と吹き出す汗に
何処からか冷たい波が忍び寄る
凍り付いた無音の感触に
体は背後から硬直する
感性だけが支配する空間に私は
確かに閉じ込められた
おまえは誰だ…

?
私は外を眺めている
ピアノの前の椅子が定位置
動くことも
声を出すことも
表情を変えることも
許されない
何時だったか
何時ものように
目覚めるとここだった
家族もみんないるよ
各々の位置から
閉じない視線を微かに浴びる
誰も何も動かない
虚ろに響くのは
正確過ぎる時を刻む音だけだ

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